私たちの周りにはさまざまなストレスがたくさんあり、現代社会はまさにストレス社会と言えます。ストレス状況が長く続いたり、それが非常に強いものだった場合に、時に私たちはスランプ状態に陥ったり、元気がなくなったりする状態になります。この状態を「抑うつ状態」といいます。
そしてこの抑うつ状態は、話を聞いてもらったり、休養をとったり、環境調整をすることによって、多くの方はまた普通の状態に戻っていきます。しかし、わずかな人はその回復路線に乗れず悪くなっていってしまいます。そうなると、もはや話を聞いてもらったりするだけでは回復できず、専門医により抗うつ薬という特別な薬物療法が必要になってきます。この状態が「うつ病」です。うつ病は必ず治る病気です。それも早期発見し早期治療を始めれば、回復するまでの期間も短くなります。
このうつ病に陥った方の一部の方が「死にたい」という願望を持ってしまいます。そして実際に自殺企図をした方のほとんどは助かるのですが、ほんの一部の方は完遂されてしまい、今は1年間で3万人いるということです。ですから誰か近くの方、家族・お友達・会社の同僚や上司の方のどなたかが「うつ病かもしれない」と気づいてほしいのです。うつ病の方の考え方はすべて否定的で、絵本のなかのカー君のように自己評価も低く絶望的になってしまいます。
私の研究では今の中学生の4人に1人が、在宅で介護をしている方の4人に1人が抑うつ状態であることがわかっています。身体の病気で入院している患者さんの3人に1人が抑うつ状態です。家族や同僚やお友達やご近所の方など、身の回りの方を見回してほしいのです。少しでも元気のない方がいらしたら声をかけて上げてください。
聖路加国際病院 精神腫瘍科医長
厚生労働省科学研究班 主任研究者 保坂 隆 |